第168回国会 
参議院第6回農林水産委員会(農業者戸別所得補償法案質疑)
農林水産委員会質疑@ (2007年11月8日) 抜粋
農業者個別所得補償法案について

(牧野委員)参議院選挙のときの民主党のマニフェストで農業の所得補償を公約に挙げていた。対象としている農作物であるが、公約の時点と法案になった時点で対象農家が変わったと思われているのか、変わってないと思われているのか。
(平野委員)「原則として全ての販売農家に個別所得補償を実施します。」という規定であり「原則」である。法案で具体的中身を示した。

(牧野委員)お米以外の農産物も理論上は考えられるということで今も考えは同じか。
(平野委員)変わっていません。

(牧野委員)米、小麦、大豆を例としたのは他の農産物と比べて市場価格が把握しやすいからではないか。
(平野委員)米ですら正確なデータはない。あとは精度をどこまで追い詰めるかである。

(牧野委員)この法案では補償が米、小麦、大豆の農家に限定されてしまう。山間部で米農家厳しい条件の農家を事実上対象から外したが、どう考えているか。
(平野委員)条件不利地域については今の中山間地域直接支払制度が適用できる場合が多い。それ以外で対応できない場合は考える必要がある。

(牧野委員)法案の名称ですが、所得補償の所得とは農家には交付金を受け取れると認識されたと思われる。利益が出ない場合の赤字補填であるようだが、これでは所得という言葉は適当ではないと思うがどうか。
(平野委員)本来受け取るべき販売総収入、販売額の不足を補填すること。それは結局所得を補償する事だと考えられる。

(牧野委員)販売費と生産費の差額としか書かれていない。「下回った」ということがかかれてないから逆の場合も適用されてしまうのではないか。
(平野委員)今後全国を説明しに廻り、そごのないようにしたい。

(牧野委員)法案には「農業者」と言っているが、販売農家等もいますので言葉として適当ではないとおもいます。
(平野委員)よく承っておきます。

対策費用一兆円について

(牧野委員)対策費用が一兆円というのは積算もできていないのに法案に額を入れるのはおかしくないか。
(平野委員)本来うけとるべき収入を受け取れていない農家に対して、どれだけの直接支払の額を確保すべきか、というところで一兆円である。

(牧野委員)一兆円というのは選挙時の公約で言ってしまって変えられないから法案にも入れたのではないかと推測するが、いかがか。
(平野委員)一兆円を出してから米、麦、大豆の単価を設定していきたいという大枠です。

(牧野委員)農家の人たちに、自民党の農業政策は夢を与えてこなかったといわれた。民主党の今回の政策は夢を与えてくれたといわれた。この法案はその夢と大きく違うと思うがどうか。
(平野委員)結果として大風呂敷だったなという批判がくれば受け止めなければならない。逆に、まじめに考えているなということであれば、それなりの評価がくる。

第168回国会 参議院第6回農林水産委員会(全文)

○牧野たかお君 
 私は、この七月の参議院選挙で静岡県選挙区から当選いたしました自由民主党の牧野たかおでございます。この四月まで県会議員を十二年、その前は、今日はいらっしゃいませんけれども澤議員、そして米長議員がおられたフジテレビの系列のテレビ局の記者として静岡県の農業にかかわらせていただきました。また、私の家は代々農林業でございまして、父を早く亡くしたことで私も農家資格を持っております。その立場から今回の法案について質問をさせていただきたいと思います。
 さて、まず、参議院選挙のときの民主党の農家に対する所得補償の公約と、現在審議されております農業者戸別所得補償法案の違いについてであります。このことについては、先日、野村議員、また佐藤議員も質問されましたが、私は確認の意味を含めて再度質問をさせていただきます。
 参議院選挙のとき、民主党は、政府・与党の農業政策は大規模農家だけが恩恵を受け、小規模農家や高齢者農家を切り捨てていると主張し、一兆円の戸別所得補償制度の創設を訴えたと思います。佐藤議員もお使いになりましたが、くどいといえばくどいかもしれませんけれども、もう一度使わさせていただきます。(資料提示)
 このチラシとマニフェストを見ていただきたいと思いますが、マニフェストの中では、三つの約束のうち三つ目、「農業の元気で、地域を再生。農業の「戸別所得補償制度」を創設します。」と掲げておりますけれども、そのマニフェストの中には農産物を特定する文言は一言も書かれておりません。そして、これを、チラシ拡大したものでございますけれども、すべての販売農家という言葉がこことここにわざわざ赤い字で強調してあります。ここの中にも、対象農作物、ここですけれども、ここには米、小麦、大豆、そういうふうに書いてありますけれども、その下の二番目のところに、地域の農業振興に欠かせない作物と書かれております。これを見た全国の農家は所得補償をされる範囲をどう見たと思いますか。
 私が選出されました静岡県を例に取りますと、農業産出額は平成十七年で二千五百十六億円、全国十二位です。この内容は、一番がお茶で六百五十二億、二番が野菜で六百三十三億、三番がミカン、イチゴ、メロンなどの果物で二百七十六億、四番目が米で二百二十五億円となっております。静岡県というのは、県全体では農業県でありますけれども、お米だけ見た場合は自給率四〇%の消費県です。静岡県でいうならば、販売農家ということを指す言葉は、米以外の農作物を作っている農家が産出額のベースで考えた場合九〇%以上になります。こうした農家が民主党の公約をどう受け取ったかといいますと、当然のことながら、自分たち、米以外のものを作っている、お茶や野菜を作っている農家も果物を作っている農家も、みんな自分たちも対象になるというふうに思ったと私は思っております。現に、私も県内を回ったときにそうした声を多く聞きました。同じことが多分、全国のお米以外を作っている農家の方々にも言えるんじゃないかと思います。
 このように公約と法案では対象農家が私は変わってしまったというふうに受け取っておりますけれども、実際にこれは変わったと思われているのか、変わっていないと思われているのか、まずそのことをお聞きしたいと思います。
  ○平野達男君
 私どものいわゆるマニフェストには、「原則として全ての販売農家に戸別所得補償を実施します。」という規定をしていまして、「原則として」という言葉を掛けております。そして、今回の法律の中で具体的な中身を示したということです。
 なお、このリーフレットにつきましては、初日からずっと様々な形で取り上げられまして、いろいろな見方、評価があるということについては重々承知しております。

○牧野たかお君
 平野議員の御答弁は私も何回も伺っておりますんで、平野議員のお気持ちとこのマニフェストのチラシを作った方たちとはちょっと多分違うのかなというふうに私は受け止めておりますが、そうであったとしても、私は、政党で公党である以上、それを公約としてうたったことは私は大きな、もしこの法案との中身が違うというならば大きな私は問題があると思います。
 次に行きますけれども、野菜やお茶などのお米以外の農産物の販売額が要するに生産費を下回らない、前の要するに説明の中では政令で定めるということで、ある意味では米、小麦、大豆以外のものも理論上は考えられるというようなお答えだったんですが、それは今でも同じでしょうか。

○平野達男君
 ええ、変わっておりません。

○牧野たかお君
 もしそのことをお考えだという場合ですと、私は、お米とか小麦とか大豆というのは管理された農産物、市場価格だけじゃなくて、要は行政がかかわってきたり農協がかかわってきたりということで、生産費も、そしてまた販売額も把握ができると思うんですが、お茶のことを一つ例に取りますと、非常にその流通経路が複雑で、要は販売の標準額単価も生産の単価も私は把握するのは非常に難しいと思うんですよ。だから、実際には米、小麦、大豆にしたというのは、ほかの農産物はそういう把握ができないから外したんじゃないかと勝手に推測をしておりますけれども、事実上、そういうことなんでしょうか。

○平野達男君
 例えば、米についても生産費調査というのはこれは政府が出していまして、これはやっぱり信頼するに値するというか、信頼するしかないデータだと思っています。
 私どもは、今回は、それに対しての市場価格、これを何にするかということについてはこの委員会で私は何回も庭先販売価格だというふうに言いました。要するに、農家が直接米を売ったときにどれだけ、一俵当たりどれだけのお金が入るかということなんですが、このデータを何ぼ探しても出てこない。これは不思議なんですね。私はこれびっくりしました。もっとひどいのは、農家に聞いても、大きめの農家は別かもしれませんが、いわゆる高齢者の方々に話聞くと、一俵どれだけ、米売るとどれだけ手元に入りますか、前渡金は一万一千円だったな、あと精算されているんだけど、どうなっているのかな、分からないと言うんです。それは農協に通帳を預けているから行き先が分からないんですよ。こういう事態があるというのは事実なんです。だから、そういうことに対して、じゃそういうデータをしっかり把握、いかにして把握するか。米ですらこういう状況だから、多分いろいろ問題があると思います。
 ただ、あとはこれをどこまで、精度をどこまで追い詰めるか。あるいは一定のところで一定のモデル計算をして庭先の販売価格を決めるとか、いろんなやり方はあるんだろうと思っております。そういった実際のデータ、それからそのデータを追求するに当たってのコスト、そういったものを考えながら、その差額の根拠となるようなモデル作りなりデータを作っていくんではないかというふうに考えております。

○牧野たかお君
 何回も繰り返しになりますけれども、先ほど冒頭の質問で申し上げたみたいに、私は、この法案自体は事実上は米を作る農家、麦を作る農家、そして大豆を作る農家に限られてしまうと思うんですけれども、何回も御答弁の中で、要するに、赤字でも土地を荒らしてはいけないと思って、犠牲を払ってもその土地を守っている高齢者や小規模な米農家のお話が何度も平野議員のお話の中で出てきますけれども、私の身の回りでは、そういうのは米農家ばっかりじゃなくてすべての農家の中でそういう方が一杯いるというふうに私は思っております。それも自分のところの話ですけれども、やっぱりお茶を作るにしても野菜を作るにしても、だんだん手作業では肉体が、体力が衰えてきますので、赤字覚悟で機械を購入して土地を守っているお年寄りも何軒も私のところにもあります。本当に日本の農業を私は下支えをしている大切な農家だと思っておりますけれども。
 私のところで、川根本町という、ちょっと自分のところで恐縮ですけれども、人口一万人ぐらい、一万人弱ですけれども、高齢化率が四〇%の小ちゃな町があります。そこは山間部ですので、実は米の販売農家は一軒もありません。もちろん自家消費しているところはありますが、少なくとも売っている農家は一軒もありません。ですので、そういうところでは、幾らお米を作りたくても、平らな土地がありませんから米を作れないんですよね。だから、そういう方たちを私はある意味では、土地を守るための大切な農家とおっしゃるならば、そういう方たちも対象にしないのはある意味ではちょっとおかしいかなと思っております。
 選挙のときのことを何回も言って恐縮なんですが、その方たちも実は民主党が唱えた公約というのは自分たちも対象になるとそう思って、私が選挙のときのことを申し上げますと、隣の山田さんには申し訳ないんですが、選挙区は地元ですから私を応援してやると、ただ比例区は自分たちのことを考えてくれる民主党を支援すると、農村部でありながらそういうことを何人にも言われました。
 ですので、こうした方たちの中には、おじいさん、おばあさんだけじゃなくて、本当に赤字覚悟で農業経営をされている方も一杯いらっしゃいます。皆さんは、これまで農村の維持とか環境保全などの農業の多面的な機能の確保を目的に挙げていらっしゃいますけれども、こういう山間部の、米農家ではない、本当に厳しい条件の中で必死に農地を守っている、そういう方たちを事実上対象から外したわけでありますけれども、このことをどういうふうに思っていらっしゃいますか。

○平野達男君
 いずれ法律の枠組みについては、これは何回も申し上げたとおりですけれども、標準的な生産費と標準的な販売価格との差額を基本とした交付金ということで、その尺度をやっぱり維持するのは原則だと思っています。
 それで、今の牧野委員のお話にあった、いわゆる条件不利地域というような地域については、多分今の中山間地域直接支払制度はそれがそのまま適用できる場合が多いのではないかというふうに思っていまして、もしそういった標準的な生産費と販売価格に差がないような作物を栽培されている場合には、今回のいわゆる交付金というのは対象になりませんけれども、条件不利地域の今の仕組みそのものは対象になる場合もあると思います。
 いずれそうした地域の、こういった言葉は妥当かどうか分かりませんけれども、限界集落という言葉が出ていますけれども、集落の中で一生懸命土地を守って農業を守っている方々にどういう支援をするかというのは、この法律の中でもし対応できない部分があるとすれば、これはもう本当に、いわゆる与野党を超えて与党さんも我々も、これ不足の部分については考えていく部分ではないかというふうに思っています。

○牧野たかお君
 おっしゃる趣旨は分かりますが、これは後ほど申し上げますけれども、やっぱり公約として広く世間に示した内容が法案とは違うということは、私はかなり問題としては残ると思います。それは最後の方に申し上げますけれども。
 この法案の名称なんですけれども、そもそも所得補償の所得という意味なんですが、これは私だけじゃないと思いますけれども、収入という言葉と同義語で使われる場合もありますけれども、一般的には利益という意味として受け取る方の方が私は多いと思います。私自身もそう思いましたし、私が話をした農家もそうでありました。ほとんどの農家が、これは法案というよりも選挙時の話ですけれども、ほとんどの農家が農業を営んで農地を守ることの代償として交付金を受け取れるというふうに私は認識したんじゃないかなと思います。
 それで、何回も御説明があるみたいに、販売額が生産額を下回った場合、それをその差額として支払うというふうに書いてありますけれども、これは販売額が生産費を下回った場合というのはこれは利益じゃなくて、要は言葉で言うと利益が出ない、ちょうどゼロのところに持っていくことになりますよね。ですので、私は所得という言葉じゃなくて、というのは適当な言葉じゃなくて、収入ならまだ分かりますけれども、所得の補償という言葉はちょっとこの法案の中身とは当てはまらないんじゃないかと私は思いますけれども、いかがでしょう。

○平野達男君
 私ども所得という言葉を使ったのは、労賃も物財費も含めて投入したことに対して市場価格がどういう値段で形成されるかということから考えて、本来であればその労賃と、少なくとも労賃と物財費は賄われるような値段で価格が形成されることが望ましいんだろうと思います。そして、その労賃と物財費の部分が本来でいうところの受け取る額の総売上げといいますか、所得といいますか、そういう形で言葉でとらえて、その差額が出た場合に本来受け取るべき収入が、収入と正におっしゃいましたけれども、収入の部分が不足していると、そこの部分を補てんするということです。
 そして、厳密な意味で所得だとかそういう概念でとらえますと、いわゆる所得という概念とは違うという御指摘は多分出てくるかと思います。しかし、今私どもが言っているのは、本来受け取るべき販売総収入、販売額に対して不足が起こっている、そこの部分を補てんすることによって結局はやっぱり所得を補償することになるんだという考え方でこの法律の名称を考えているということです。

○牧野たかお君
 それもおっしゃる意味は分かりますけれども、要は平野議員にしても、こういう農業問題にお詳しい方、また、要は農業の中でいえば農業所得というのは今おっしゃったみたいにそういう部分も入ってくるのかもしれませんけれども、やはり法案として、法律として使う以上、私は、農業者の中で使われている用語だけじゃなくて、やはり世間一般的な中での言葉として使われた方がいいんじゃないかなというふうに思います。
 それと、これちょっと直接的に今のお話とは違うんですが、何回も販売額と生産費の差額とおっしゃっていますけれども、それ条文の中に第四条第二項で書かれておりますけれども、これも言葉の文章で言うと、要は標準的な販売価格と標準的な生産費の差額としか書かれてないものですから、うがったことを言いますと、差額だから逆の場合でもこれ適用されちゃうんじゃないですか。要するに、下回ったという言葉を一切使われていないから、しかも順番で読んでいくと販売額とその生産費の差額と書いてあるから、条文とするとちょっと言葉が適切じゃないんじゃないかと思いますけれども。

○平野達男君
 いろいろ御指摘いただいておりますが、選挙中に誤ったメッセージを送っているかもしれないとか、そういった御指摘をいただいておりますが、いずれ、今回私どもがこの法案で示した姿がマニフェストで言ったところの戸別所得補償の考え方でありまして、これからキャラバン隊を張って全国に一斉にこの法案の概要を説明してまいります。
 その中で、もし、今いろんな御指摘いただきました、そういったメッセージで取られているということについては、きちっと御説明をして、そこのそごはないようにやっていきたいというふうに思っています。

○牧野たかお君
 しつこいと言われるかもしれませんけれども、もう一つ、法案の名称で言いますと、農業者という言葉が頭に使われておりますけれども、再三繰り返しておりますが、農業者というとすべての私は農業者が対象になる、そういうふうに受け取られると思います。仮に、販売農家としても農産物を特定しているとは受け取れませんので、この法案の中身では事実上、米、麦、大豆の生産農家に限られておりますので、この農業者という言葉も私は適当ではない、適切ではないと思いますが、いかがでしょう。

○平野達男君
 御意見としてよく承っておきたいと思います。

○牧野たかお君
 それでは次に、これも何回も出ている話なんですけれども、対策費用一兆円についてお伺いしたいと思いますけれども。
 これまでの説明、答弁の中では、平野議員は一兆円というのは宣言であり、枠であるというふうにおっしゃっておりますけれども、それも精神論として私も分かるんですけれども、そもそもその対策費用がしっかり積算できていないのに法案の中にこういう具体的な額を入れるということは、法律を作る、法案としては異例ではないかと思いますが、いかがでしょう。

○平野達男君
 今回の場合は実施法でありまして、普通の、例えば品目横断にしても先般の政府の担い手法案にしても、これは予算関連法案ですから予算とセットで多分法律も出されたと思います。あっ、あれは逆、担い手は先に法律走ったかな、順番どうだったですかね。通例では、いずれにせよ法律の段階では、詳細な単価についてはその段階では普通は公にしませんから、それで単価が決まっていない以上、予算のバックとかなんか多分できないと思います。
 今回の場合も、何回も御答弁申し上げましたけれども、米の交付水準をどのようにするか、あるいは麦、大豆、そもそも最終作物をどこまで限定するか、そういったことについてはこれから法案が通った段階でぎっちり詰めていくという課題として、とりあえず先送りされております。
 したがいまして、今のこの現状の段階では、かくかくしかじかで、米についてはこれ幾ら、麦に対してはこれ幾らというようなバックは作れないということなんです。そしてまた、いろいろな法案の提出の今までの手順としては、そういう手順を取ってきて、それ自体はおかしいことではないというふうに思っています。
 じゃ、しからば一兆というのは何かということなんですけれども、私が宣言として申し上げたのは、直接支払として農家に直接行くような、しかも、本来受け取るべき収入が受け取れていない農家に対して、どれだけの直接支払の額を確保すべきかということで一兆円だというふうに言っているわけです。
 そして、この一兆円は、もう一つ言えば、これも一番最初に申し上げましたけれども、過去十年間ぐらいで生産農業所得、農家の収入は一・八兆円ぐらい落ちております。そういったことも視野に置きながら、一兆というその枠組みを設定して、そしてこのお金を大事に使いながら、米農家、あるいは自給率上げるために畑作農家の生産意欲を刺激しながら、農業の維持と農村の維持を支える大きなツールにしたいというふうに思っていると、そういうことです。

○牧野たかお君
 弁舌さわやかな御答弁聞いておりますと、何か説得させられそうな気がしますけれども。
 私、あえて申し上げますけれども、これもうがった見方といえば、そちらの方からすればそういうふうにおっしゃられるかもしれませんけれども、私は、やっぱり選挙時に一兆円というもう額を公約として挙げちゃいましたよね。だから、その一兆円というのを、本当は一兆円でなくても、私はここの、要するに平野議員がおっしゃるみたいに宣言として言うならば、一兆円でなくてもいいと思うんですよね、額をもし入れるとしたら。ところが、一兆円と入れるのは、これは選挙時に公約で言っちゃった以上もうこれ変えられないからこの一兆円というのを入れたんじゃないかというふうに私は推察いたしますけれども、いかがでしょう。

○平野達男君
 例えばこういう例が妥当かどうか分かりませんけれども、政府が例えば公共投資何か年計画って、何兆円ってぽんと出すわけです。それで、じゃそれ全部積算バックあるかといったら、そこからブレークダウンを始めるわけです、毎年毎年の予算の中で。そういう手法を取りながら、まず政治の姿勢を大枠として示しておいて、こういう中で我々は実行しますよということで姿勢を示すわけです。後、我々がその言葉に対して信用できないというならば、だれも支持してくれないでしょう。一兆円ということは、一兆円を出しながら、こういう制度設計をしながらこれでやっていきますよということで説明していくわけですから、後は私ども民主党は責任を持ってやりますよと言っているわけです。
 そして、その考え方についても、何回も何回も申し上げましたけれども、米に対してはこういう考え方で単価を設定していきたい、麦、大豆についてもこういう考え方で単価を設定していきたいという、その制度の考え方の大枠を示しているということであります。

○牧野たかお君
 それについては、おっしゃる精神論的なことは私も理解をしておりますが、多分平行線になりますのでそれについてはここでやめまして、最後に総論としての質問をさせていただきます。
 これまで民主党の皆さんの答弁、説明を通して、日本の農業を本当に守ろうという熱意、そして弱者に対する配慮というのは私は強く感じております。私も自民党の参議院議員にさせていただきましたけれども、皆さんのおっしゃることはちゃんとそれを受け止めて、私たちもやらなきゃいけないということは一杯あるかと思います。また、これからも皆さん方にいろいろ様々なことを教えていただくことがあろうかと思いますけれども、それは有り難く思っております。
 ただし、今回の選挙公約からこの法案までの流れを見ていますと、やはり選挙ありきの私は提言になってしまったというふうに感じざるを得ません。くどいようですけれども、やっぱり民主党の政策の広報に対して、すべての農業者が、農地を守る、守るということは公共性があるということですけれども、その農地を守る公共性の代償として土地何反、何ヘクタールに対して幾らという交付金をもらえるというふうに認識したというか、錯覚したと言うと私は言い過ぎだと思いますけれども、そういうふうに受け止めた農家は本当に私は多いと思います。
 そうしたことで、これは先輩の議員の前で言ってはいけないのかもしれませんが、やっぱり自民党の農業政策の中で私が言われたのは、自民党は自分たちに夢を与えてこなかった、今度の民主党のこの公約は夢を与えてくれる、希望を与えてくれる、そういうふうに言われました。私は相当ショックだったんですけれども、新人ですので何も言うこともできませんでしたが。そういうふうに夢を与えたのも希望を与えたのも、この民主党の公約は、本当に与えたというのも事実だと思います。
 ただ、与えておきながら、今度の法案を比べた場合に、私は、その方たちがやっぱり夢、希望が大きく懸け離れているということで、私は失望された方も多いかと思います。実際に自分たちが対象になると思っていたのに、ふたを開けてみたら違ったと。そういう方たち、大勢の方たちに対してどういうふうに御説明をされますか。

○平野達男君
 夢とおっしゃいましたけれども、夢かどうかは別として、私どもの挙げた政策に対していろんな解釈がされたということはあったかもしれません。ただ、大事なことは、私どもの挙げた政策に対してそれだけの反応があったというのは、今までの農政がそれだけひどかったということでしょう。そしてまた、今農村も大変な状況を抱えているということでしょう。この段階からどうするかということじゃないでしょうか。どうも今までの話を聞いていますと、何か、自分たちは何もできません、だけど民主党はこんなことをやって支持を取り付けました、悔しい、そればっかししか聞こえないんですよ。
 だから、本当にこういうものに農家が飛び付いてきたという現状って一体何なんだということを皆さんも冷静にやっぱり分析してみたらいかがですか。そして、そこから今の農業、農村の要するにどうあるべきかという多分議論がスタートするかもしれません。
 それから、いろいろ御心配いただいています。私どもが過大広告だとかアドバルーンだとかなんとかいろいろ言われましたけれども、そういう批判があったことは真摯に、真摯でもないですけれども、淡々と受け止めたいと思います。
 そして、繰り返しますけれども、私どもは、これからこの法案を背景にこういう考え方で直接所得補償をやっていきます、こうやればこういう方向になるというような、できるだけ具体化のイメージが開けるような説明を全国でこれからやっていきたいと思っています。その結果として、何だ、民主党は随分大ぶろしきだけだったなという批判が来れば、それは受けなくちゃならないでしょう。いや、そうじゃなくて、いや民主党は本当にまじめに考えているなということであれば、それなりの評価が来ると思っています。私どもは後者だと信じております。
 以上です。

○牧野たかお君 終わります。
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